初めての富士登山の前に登るべき山①

日本一の山、富士山。
日本人なら、日本に住んでいるなら一度は登っておきたい山と言われます。
7月初旬から8月下旬までの開山期間に富士山の山頂を目指したいお客様は多くいらっしゃいます。そういったお客様から聞かれる質問。
「富士山を登る前にどんな山に登っておけばよい?」

その方の技術、体力によってオススメの山も大きく異なりますので、お答えには慎重を期してます。すぐに山を答えずに、まずはその方のそれまでの経験や富士登山までのトレーニングに割ける時間などを聞き、オススメのメニューを提案しています。

今回はこの夏・次の夏の富士登山に向けて、どの山に登ればよいか?について説明したいと思います。

◆富士山の難易度


富士山の最高標高点となる剣ヶ峰の標高は3,776m。一方、登山口となる富士山の五合目は一般的なスバルライン口で約2,300m。頂上と登山口の標高差は1,500m程。
この1,500mの標高差がどれほどなのか?登山を始めて既にいくつもの山に登ったことがある人ならピンとくるかもしれません。
東京で最もメジャーな山、高尾山。標高は599m。登山口となる高尾山口駅の標高は約200m。高尾登山の標高差は単純計算で400mです。
つまり富士山の標高差は高尾山を4往復する程です。
しかしこれは単純計算での話。
富士山は高尾山に比べても標高が高い山。
・気温が低い
・空気中に含まれる酸素の量が少ない
・風雨や直射日光をしのげる森林がない
・ご来光待ちとなる夜明け前の登山道は多くの登山客で渋滞が発生し動けない
といった富士山特有のストレス要因があります。

富士登山はズバリ、高尾山を4往復以上の困難を強いられる登山となります。

ただ、好天に恵まれご来光を拝めたり、また見えなくとも日本一の標高から眺める下界の景色を見た時の感動・達成感は、他の登山とは比較ができない程の素晴らしいものになるはずです。

富士山には4つの登山ルート(コース)があります。
1)スバルライン五合目から始まる吉田ルート
2)馬返五合目から始まる須走ルート
3)御殿場口新五合目から始まる御殿場ルート
4)富士宮口五合目から始まる富士宮ルート
今回は 1)の吉田ルートを中心に解説いたします。

◆山のグレーディング

登山の難易度・困難度を測るのに、「山のグレーディング」があります。長野県と
長野県山岳遭難防止対策協会が登山者の山岳遭難を防止するために2014年に策定し、近年では多くの県もグレーディングに参画するようになり、今や登山の難易度を図る客観的指標になっています。ここでは六県の日本百名山の「登山ルートグレーディング」(抜粋) を基に富士登山の難易度をよりより客観的に比較します。

◆富士山の技術的難易度

ここで富士山の 登山ルートグレーディングを確認してみます。
グレーディング表は登山をルート別に①技術面、②体力面の2面で評価している表です。
富士山の技術的な難易度はA~Eの5段階中2段階目のBランク(★★)

Bランクの定義は
◇沢、崖、場所により雪渓などを通過
◇急な登下降がある
◇道が分かりにくい所がある
◇転んだ場合の転落・滑落事故につながる場所がある

という定義です。
同等の難易度の山には焼岳、蓼科山、常念岳や北岳などがあります。

まだ登山を始めたばかりで、多くの山はこれからという方にはピンときませんね。

Bランクの前後のランクの定義を見てみます。

Aランク
◇概ね整備済
◇転んだ場合でも転落・滑落の可能性は低い
◇道迷いの心配は少ない

Cランク
◇ハシゴ・くさり場、また、場所により雪渓や渡渉箇所がある
◇ミスをすると転落・滑落などの事故となる場所がある
◇案内標識が不十分な箇所も含まれる」ほどは難しくないレベル

この中間が富士山のBランクの技術的難易度となります。

山のグレーディングにおける技術的難易度
富士山に次ぐ日本における標高第2位の山、山梨県北岳。難易度は技術的・体力的にも富士山と同等との評価。


技術的難易度は以上となりますが、山の困難度のもう一つの指標、体力的難易度はどうでしょう?

◆富士山の体力的難易度

グレーディング表では1~10の10段階の分類の中、富士山は5~7にランク付けされています。このランクは数字が大きい程困難という意味です。
技術的難易度では5段階中4番目の難易度でしたが、体力的難易度は10段階中4番目から6番目の難易度。
ここまででも、富士山は技術面よりも体力面での難易度が高い山と言えます。

最も体力的難易度の低い吉田ルートや富士宮ルートでもランク5の「1泊以上が適当」とされ、より困難な須走口でランク6、御殿場口ではランク7となります。ランク7は「1~2泊以上が適当」とされる、かなりの体力を要する登山ルートとなります。

御殿場ルートを登山中の景色。2000m級の丹沢山塊も低く見えてしまう程。

◆富士山を登る前に登っておくべき山

これまでに紹介した「山のグレーディング」。この注意書きには以下のことが書かれています。

〇初心者の方はグレーディングの左下のルートから徐々に右上のルートの方に経験を積み重ねていって下さい。

では富士山の左下にはどのようなルートがあるでしょうか?

6県(長野・山梨・静岡・新潟・岐阜・群馬)の百名山における、富士山よりも難易度の低い山とルート

上記表に書かれた山が、富士登山前に登るべき山と言えます。
ただ、これらの山はグレーディングに参画している県の百名山に限定した山であり、このほかにも多くのオススメする山が存在します。
また、これまでの登山経験によっては、いきなり金峰山や元白根山がふさわしいかと言えばそうとも言えません。
経験が少ない人や、体力面・技術面で自身のない方には、より着実に、多くの経験を積んでから富士登山にチャレンジするのが良いと考えます。

◆登山ガイド.netがオススメする山

ここでは東京近郊に住まわれる方を対象に、これまで富士登山を目指す人に案内してきた山をご紹介します。

1)高尾山 稲荷山コース
東京近郊に住む方にとって、最も身近な山の一つが高尾山。登山を初めて経験する人にまずは高尾山にお連れしています。標高差は400m。標準コースタイムは登りで1.5時間。滑落や道迷いなど遭難の原因となる難易度の高い場所はほとんどなく、多くの登山者が行きかうことから、安心してオススメをしています。
先ずはこの山に登り、体力度をチェックしてみてください。
チェック方法は
・登山口の高尾山口駅から高尾山頂の大見晴台までの休憩時間を含めた所要時間を測る
・標準コースタイムの1時間25分と比較してみる

実際のコースタイムと、山と高原地図で記される標準コースタイムを比較することで、登山者や登山グループ(パーティー)の早さを比較することができます。
早さというのは歩くスピードだけでなく、休憩を取る頻度・長さやも含まれます。
登山の目的は人それぞれ。素晴らしい景色を堪能したり、休憩時間にのんびりリラックスをしたり、花や人物など多くの写真を撮ったり、一緒に行く山友達との会話を楽しんだりと、歩くだけが目的ではありません。それら多くの目的を達成しながら頂上に着くまでの時間を測ってみてください。その合計時間を標準コースタイムと比較することで、標準と実際の比較値が算出できます。
・私(たち)は標準コースタイム通りに行動できる(100%)
・標準よりも1割早く移動できる(90%)
・標準の1.5倍の時間を要する(150%)
といった具合です。

2)筑波山
日本百名山の中でも難易度は低く、また下山にロープウェイやケーブルカーなども利用できることから、高尾山の次にオススメしている山です。
高尾山はむき出しの岩の上を歩くことは少ないですが、筑波山はコースによっては露出した岩肌の上を歩いたりと、わずかではありますが高尾山よりも難易度は上がります。

3)高尾山~陣馬山~藤野駅縦走
舞台はまた高尾に戻します。多くの登山者は高尾山頂に到着後はまた高尾山口に向けて下山を開始してしまいます。しかし高尾山の先にはまだまだ魅力的な山が存在します。城山、景信山、そして陣馬山です。距離もコースタイムも高尾山に比べだいぶ伸びてしまいますが、人通りも多く難所も少ないことから、より長距離でのコースタイムを計るのに有効かつ安全なコースとしてお勧めしています。

4)大倉~塔ノ岳
次なる山は丹沢山塊の塔ノ岳になります。これまでの山と比較すると、体力面で大きな負担がかかってきます。でも富士山ほどではありません。単純標高差は1,200mと富士山吉田ルートの1,500mに近づいてきます。長く単調な登りが続く点では富士山に近いものがありますが、アクセスも良く途中に多くの山小屋があり安心して登れる山の一つです。
この山を登り切れれば富士山登頂もより現実的になってきます。

塔ノ岳を登り続け、視界が開けてくると絶景が待ち構えています

◆まとめ

富士登山は登山を始めたばかりの人にとって憧れの山。ただ、登山経験が少ない人にとって、どれほど困難なのかはわかりづらい山でもあります。
また富士山は標高が高く、他の山にはない独特な地形・標高から、悪天候時の対応の困難さや 高山病のリスクがあったりもします。
今回は1回のアタックでより高い確率での登頂を目指すための方法をご紹介しました。

皆様が無事富士山頂に立ち、登山の楽しさを存分に味わっていただくことをお祈りいたします。

北岳から望む富士山

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